2013年5月22日水曜日

Stéphane Mallarmé マラルメの扇

                
「扇」  Éventail                  投稿者訳

扇言葉 さながら        おうぎことばさながら
一あおぎ 空を舞い       ひとあおぎそらをまい
明日の詩は 生まれ来る     あすのしはうまれくる
君の手の 住み処より      きみのてのすみかより

翼折る 伝令か         つばさおるでんれいか
もしそれが 彼ならば      もしそれがかれならば
君の背に はためくは      きみのせにはためくは
映し出す 鏡なり        うつしだすかがみなり
澄みわたる その中で      すみわたるそのなかで
ひらひらと 追われては     ひらひらとおわれては
沈み行く 灰のみが       しずみゆくはいのみが
我が心 くもらせる       わがこころくもらせる
絶え間なく 君の手に      たえまなくきみのてに
いつもごと 行き返る      いつもごとゆきかえる




「もう一つの扇」   Éventail de Mademoiselle Mallarmé

                               投稿者訳

夢見人 君ゆえに        
ひたる清き喜び         
知れよかし 巧みなる 絵空事  
我が翼 君の手に 委ねたり   
黄昏のそよ風は         
打ち打ちて 君に寄せ      
囚われの一煽り         
世の果てを一揺るぎ       

目眩 空気震わせ        
燃ゆる抱擁のごと        
空しくも生まれつつ       
遂げられも消えもせで      

天国は寄り難し         
笑みこぼる 口の端       
忍びつつ 滑り込む       
打ち揃う襞の奧         
金の夕陽によどむ        
ばらの岸の王杖         
然有りとて 君の打つ      
腕飾りは きらめく       
白き飛翔 閉ざして             (10音)