2013年9月15日日曜日

「鳥 花 果実」3.Jaccottet


眼は
あふれる泉   

だがそれは どこから来たのか
一番 遠くよりもっと向こうから
一番 下よりずっと下方から

私は別の世界を飲んだらしい



眼差とは何か
言葉より鋭い槍
ある過剰から 別の過剰への ストローク
一番 奥底から 最も遠い遙かなものへと
一番 暗いものから 最も透き通ったものへと

梟のように



ああ あの牧歌を もう一度聴きたい
草原の奧から立ち上る
そこには素直な羊飼いたちがいた

ただ曇ったあの杯のために
口をあてても何も飲めないが
ただ瑞々しい一房の葡萄のために
この煌めき さてはビーナス!




もう甘んじてはいられない
時の速さで飛ぶこと

このように じっと待つことを 信じたい










「雨燕」

日中(ひなか) 喧噪の時
生に うろたえる時
麦わらすれすれに 
舞い飛ぶ 
三日月の 鎌たち
突然 高みで 何もかもが叫ぶ
耳には 到底たどりつけない 高みで






陽光の甘やかな熱の中で

それは微かなざわめきにすぎない
( 舗道を歩くヒールのような鎚音 )
風に 遠ざけられた
山も 積み藁にしか見えないあたりの  

ああ、彼女は終に燃え上がる
地に落ちていく琥珀と
リュートのしきり板と ともに     



Oiseaux fleurs et fruits    Philippe Jaccottet
"L'encre serait de l'ombre"    Gallimard 2011 p.143



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